和束 地域カンファレンス 2

和束町にて,第一回(報告会)に引き続いて,茶に関する景観の歴史や特徴を探るために,地域カンファレンスを開催しました(2018.3.9).山口によるプレゼンのあと,原山と釜塚に分かれて上杉先生と藤井先生のファシリテーションにより議論を進めました.なお,院生の三輪と高林が記録を務めました.
茶農家の方々の景観に対する認識,茶生産に対するこだわり,集落と茶業の歴史,茶工場の歴史や使い方,自然条件の活用や季節や時間の感覚など,短い時間でしたが密度の高い情報交換ができました.また,飛び入りとはいえ最初から最後までご参加いただいた堀町長からもたくさん話を伺いました.
この成果は遺産解説書兼案内マップとして作成,公開を予定しています.

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国際研究ワークショップ

Wong先生やQin先生(CEE副専攻長)を含むシンガポール南洋理工大学の訪問団が京都大学に来学され,京大の土木系専攻,環境系専攻の研究室との今後の研究協働の可能性を探るワークショップを開催しました.
教え子の王君がWong先生の研究室で博士研究員兼プロジェクト研究員として研究活動を行っている関係で,私がホストとなりました.今後の,シンガポールと日本の歩行環境を中心とした比較研究,実践研究における連携が期待されます.

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南洋理工大の訪問団と,京大土木系・環境系の参加者

 

先月の2月3日には,イコモス文化的景観国際委員会・前委員長のモニカ女史やイコモス中国のリー女史をまじえた宇治茶の景観を考える国際カンファレンスに参加しました.

2月22日には,宗田先生からお誘いいただいて,農業遺産の保存と活用を議論するワークショップに参加し,ピエモンテ州ランゲのパローロ・ワイン産地の価値や保存管理計画,シャンパーニュの景観保全管理のなどの議論に参加しました.

海外のことを知ることと同時に,日本の知見をいかに海外に示すかということも問われています.頑張りたいですね.

個性を育む都市デザイン シンポジウム

去る12月21日に,西村幸夫先生(東京大学 都市デザイン研究室 教授)の退職記念シンポジウム
個性を育む都市デザイン ーその研究・実践を展望する」に討議者として参加しました。

symposium171221-1コーディネーターの野原さんのご報告,事務局の永野さんのご報告はこちら。

個人的にはこれまで西村幸夫研の考え方や実践手法から学び,いつも参考にさせていただいていたので,お声がけいただいたことはとても光栄でした。

プレゼンでは,野原さんの趣旨説明(デザ研のフィールドとして,関西がとても少ないのに驚きました)に続き,本流のアーバンデザインをどんどん展開される遠藤新さん,都市に関わる他分野の専門を媒介し関係構築を目指すクリスチャンさん,丁寧な地域性の読み解きの上でのシナリオプランニングと事業としての持続可能なまちづくりをめざす中島伸さん,のお話しが続きました。みなさんの問題提起は,これからの都市デザインの多様な展開や大きな可能性を感じさせるものでした。個人的には伸さんの実践の考え方が自分のものにとても近いと感じて驚きました。討議もとても面白かったです。

私からは,都市をデザインするという行為の意味の拡大,公共空間をまちづくりの議論の俎上にのせること,そのためのまちづくりの芯は地域のアイデンティティであること,空間を人との関わりから捉えること,精神性を考えること,などについてコメントしました。

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討議の一場面(写真:永野さんfacebookより)

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討議開始直前の様子

 

そのまま流れで,都市デザイン研究室の忘年会へ。日付が越えるまで,みなさんの熱い話や,西村先生のお話しをきいて,たくさん元気をもらいました。

個人的に西村幸夫研の活動を参考にしていたと書きましたが,もうひとつ参考にしていたのが,京大・西川幸治研(都市史,歴史的町並みの保存修景)です。都市の歴史的景観と修景,景観のデザインをうまく結びつけたいと。そのうちに私自身が京都,奈良,滋賀,大阪のまちづくりに関わらせていただくことが多くなってきて,これらの豊かな歴史的文化的固有性・多様性を後世へとなんとか継承しなければならない,と日々強く実感していますが,今では,京都もしくは関西における「都市史研究」の研究拠点ならびに「歴史(文化)景観の保存・活用・整備」の実践拠点を形成することが,私自身にとっても重要なミッションであると考えています。そういった意味でも,日本にこの分野を確立された西村先生やその学統を継ぐみなさまといろいろ話せたことは今後の励みになりましたし,これからの活動のありかたをあらためて考えるいい機会になりました。それにしても皆さん精力的です。著書も多いし。こちらももっと頑張らなければなりませんね。

追記:
別の日に京大の増井先生ともいろいろ話したんですが,「少し前まで私たちが保全を訴えてきたのは常に逆風のなかだった。今はむしろ追い風になっている。大きく風向きが変わった」とおっしゃられていました。西村先生も同じようなことをおっしゃっていました。あらためて,敬意を表するとともに,この時代のありかたを考え,広げていかなければと身が引き締まる思いです。

第9回 文化的景観研究集会

奈良文化財研究所主催 第9回文化的景観研究集会
「地域らしさを支える土木―文化的景観における公共事業の整え方―」
プログラム
(平成29年12月9日(土),於京都府立大学・大学会館(9日)
       10日(日),滋賀県東近江市と近江八幡市(10日))
に参加し,講演と,パネルディスカッションのコーディネーターを務めました。
(実際には企画時から関わらせていただきました)

File-2017-12-10-16-27-12-e1513170443171まず,今回の研究集会のテーマ「地域らしさを支える土木―文化的景観における公共事業の整え方―」について,各自治体へのヒアリング調査やアンケート調査をもとに,現状の実態把握,論点と課題の整理,具体的な改善方策,について話題提供しました。なかなか面白い調査結果が出て参りました。その詳細は,追って論文等にて発表いたします。

 

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(スタッフである奈文研の本間さんのfacebookもご参照ください。) 
 
ディスカッションは,西山先生のコメントと問題提起からスタートしました。
その後の議論は,私の記憶の限りにおいて,以下のような論点が出されました。

・公共事業を「整える」とはどういうことか。「整備」とは異なる。
・そもそも文化的景観とは何のための制度か,ということ。通常の文化財保存とは異なる。
・常に,その地域にとって何のための整備か?を考える。
・公共事業の背景には地域づくりがある。その地域づくりを文化的景観という見方をもって行うことは有効。
・その見方を以て公共事業「も」協議していく仕組みを作ること,そのなかで「固有解」を見出すこと。
・「固有解を見出す」ためにはガイドラインを参照すればよいというようなものではなく,しっかりと考えることが必要。文化的景観という見方はそもそも多面的なもの,深いものであり,いろいろな専門家の視点が不可欠。時間と手間が必要。
・「線を引く」(計画する,設計する)前の段階で,どう協議するか。
・地元のニーズを知る。住民の目線になり,住民の感覚を尊重する。
・土木のインフラはしばしばオーバースペックになる。過剰にならないようにすること。
・本当にその規模で良いのか。地元ニーズを的確に捉えることが重要。その上での協議でなければならない。
・アドバイザーの役割は大きい。事業検討前から施工時まで。技術や工法もふまえて,技術的課題とそれを乗り越える術を考え提案できるのは土木技術の知見を有したアドバイザー。
・アドバイザーにも限界があり,原案の改善や誘導はできるが,実際には,手を動かす(業務としてやる)側に実力ある人材が必要。長期的にもそういう人を育てないといけない。
・場所に応じて条件も違う,背負っている文化も違う。しっかり読み解いて,丁寧につくる。そのための時間,場をつくること(=協議システム)が大切。
・重文景選定は「考える」ためのいい機会である。しっかり考えたら,あとは「進める」勇気を持つこと。

などです。
時間が限られるなか,会場におられるみなさまのお力を借りて,実り多いディスカッションが出来ました。
ありがとうございました。
 
  
 
翌10日(日)のエクスカーション@滋賀県東近江市と近江八幡市では,
参加者の皆様を伊庭にご案内し,調査成果の概要を報告させていただきました。
論点としては,
・伊庭の固有性をどこに見出すか?(他との違いをどう説明するか)
・自然と人の関わり,その変化と持続をどう評価するか?
をあげ,実見では,
水路の構造,道の構造,敷地割,敷地のプラン,カワトなどの水利用施設,屋敷畑,農道具置き場,イケス,ジフン,家の間取り,などに着目して町を歩きました。

ディスカッションでは,
広域の水システム,自然条件とそのなかでの人間の営みについて,
村の基盤となる信仰を核としたコミュニティのありかたについて,
今後の保全計画のありかたや,地元住民の役割,などが議論されました。
地域のアイデンティティをあらわす地域づくりのストーリーを,次世代の住民と共有できるかどうか。
という,今後の宿題をいただきました。

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実見で偶然訪ねた浦川沿いのお宅 ジフンが湧いており,イケスやフナ寿司用の桶があります。

景観・デザイン委員会20周年記念シンポジウム

土木学会 景観・デザイン委員会20周年記念シンポジウム
「景観・デザインは日本を救うか? -都市・地域の再生に向けて」
ウェブページ / [プログラム PDF] 
(平成29年12月1日(金) 10:40-18:00 於京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホール)に開催校幹事として,また企画者としても関わらせていただきました。

中村先生の格調高く創造性溢れる基調講演,シンポジウムのパネリストの方々のご発表とご意見に救われて,盛況のうちに終えることができました。

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中村良夫先生の基調講演「景観パラダイムの多元性について」

中村先生は,景観/風景の捉え方を相対化され,風景は風土をいくつかの方法により読み取った成果であること,さらに風土の断片である身近な「風物」のなかに,風土生成の手がかりがあることを論じられました。そして,風土の理論が,景観問題とコミュニテイ再生を同時に扱える点にその重要性があることを強調されました。中村先生によれば,これは和辻理論の措定する「間柄的人間」が個人/社会の二重性を持っているからである,といいます。つまり,個人-社会ー自然を総括的に捉えるためには,風土という視点が理論的基盤になる,ということです。
われわれ景観研究者にとって,今後少なくとも10-20年は考え続けなければならない宿題をいただきました。

午後からのシンポジウムでは,
第1部【景観・デザインを問い直す:「行政・実務者・学識者に聞く社会課題と専門知の役割」調査報告を通じて」において,西村さんから,インタビューの成果をもとに,さまざまな立場の方々からみた景観・デザインの領域の今とこれからを切り開く重要な論点と方向性に関するご報告をいただきました。

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第2部 デザインの未来

第2部では,まさに領域が拡張しつつある公共空間の「デザイン」について,福島さんからこれまでの土木分野のデザインの成果の整理と,長谷川さん,星野さんのそれぞれの方法や考え方について議論が展開されました。とても示唆に富んだ話題提供とディスカッションが展開されました。

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第3部 景観学と政策

第3部では,景観学を政策に位置づける,もしくは政策として展開するための概念や論点が出されました。それぞれのご経験をふまえたリアリティのあるプレゼンが展開されました。ディスカッションは時間不足で,あまり議論を深めることができませんでしたが,重要な論点が出されました。
コーディネータの(私の)意図としては,事業ベースの公共デザインも景観政策も土地利用政策として考える必要があり,そのためのエリアの「網掛け」とその根拠となる価値付け,エリアのデザインを考えるための戦略実装の制度化,運動論としての展開,などについて議論しようと考えていましたが,そこまで至らず。ぜひ書籍化を目指してカバーしたいと思います。

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第4部 全体討議

1年ほど準備してきて,特に福島さんとは,膨大な議論を重ねてきました。
シンポジウムの時間内にその成果をうまく出し切ることができなかったのは正直残念ですが,
着実に自分たちの糧になりましたし,議論しながら,次にやるべき事がかなり明確になりました。
西村さんともども,是非書籍化を進め,議論の成果をしっかり形にしたいと思います。

伊庭の景観 保全と再生

東近江市との共催で、伊庭の景観ワークショップ2017
「伊庭の水辺の生き物,環境,暮らし —これまでとこれから」(11/19)
「水路の石垣の保全と活用を考える」(11/26)を開催しました。

2017年度版 伊庭ニューズレター】を作成しました(PDFにてダウンロード可能)。

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趣旨:今,伊庭の水辺景観の魅力,価値が見直されています。これまでの文化的景観調査によって、どのような価値が見出せたのか? これからどのように継承していけるのか? 景観を活用して,どのような「まちづくり」が可能なのか? これらが伊庭のまちづくりの重要な課題となっています。ワークショップの議論を通じて,今後の伊庭の文化的景観の保存・管理や整備・活用の方針を検討します。

報告:初回(11/19)は,伊庭の生態環境を調査されてこられた
深町加津枝先生(京都大学地球環境学堂准教授)をお招きし,勉強会を行いました。
議論したテーマは,
・魚に関わる文化、食文化の変化と現状をどう考えるか。これからどうしたいか?
・魚、水路の環境、生態環境の変化と現状をどう考えるか。これからどうしたいか?
などです。研究室からは,三輪,高林,畠田ら学生メンバーがファシリテーターとして参加しました。

・伊庭では,周辺水域を含めて35 種類以上の在来魚が生息しており,これほどの魚類がいるところはなかなかみられないこと。今は珍しくなった在来の生き物がすごく多くいること。アブラハヤなどは荒い石積みのすき間に隠れていて,すき間のある石垣は魚の生息環境として大事なこと。水辺/水路の幅,流速,水深,河床の環境,護岸の素材など,生息環境が多様であることが,多様な生態系をつくっていること。伊庭の人は,魚のいろんな食べ方を知っていること。などを教えていただきました。
・参加者のみなさまからは,昔は,あちこちの川で釣りをしたり,魚つかみをしたり,シジミとりをしたりしたものの,圃場整備で井川がなくなってからオカズトリの習慣がなくなっていったこと。食文化やお裾分けの文化は今なお根強く残っていること,などを教えていただきました。

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第2回(11/26)は,徳島を拠点として全国の石積み景観の保全や仕組みづくりを進めておられる
金子玲大氏をお招きし,勉強会を行いました。
・石積みの積み方,ぐり石の重要性,石積みの施工上の合理性,環境面での優位性のほか,イタリアなどの石積み集落の地域活性化の事例や,石積み学校の運営やその成果について,教えていただきました。

後半の議論も白熱し,
・石垣の保全策
・保全の目的
・保全ゾーンの設定
などについて議論を深めました。今後につながる前向きな意見が数多く出されました。
詳細の内容は,ニュースレターをご覧ください。

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北嵯峨の景観の継承にむけて

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広沢池と北嵯峨

11月7日、京都、北嵯峨の農の景観のありかたを考えるワークショップ(京都市主催)にて、
「北嵯峨の文化的景観の価値を探る」と題して、講演をいたしました。

北嵯峨の景観は、美しい景観でありますが、単に美しいだけではありません。
歴史の唯一性の重み、その重層性が、文化的景観としての価値を際立たせています。
このことについて、以下の4点から、その価値を掘り下げました。
一、秦氏の根拠地
二、離宮嵯峨院と文学にみる嵯峨野
三、営農の進化の歴史
四、近代に発見された「野」の風景

お伝えしたかったのは、北嵯峨の地が嵯峨院の「公地」であった(三代実録)ことや、
嵯峨院の風景、大澤池の庭園が日本庭園史上大きな影響力を持ったこと、
枕草子の「野は嵯峨野さらなり」,「かきまさりするもの 松の木。秋の野。山里。山道。」
にみるように、嵯峨野が自然美の代表として認められたこと、
嵯峨野という一帯でひとつのエリアイメージを形成していたこと、
そして、条理やため池築造、隧道築造、水利環境整備などの、営農の進化の歴史を目に見える形で示していること、などです。

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みなさんから、北嵯峨の価値がよく分かったと、うれしいお声がけをいただき、
修論執筆当時からお世話になった恩返しが、少しはできたかなと。