夏の合宿2016

今年から、研究室4年生(+希望者)向け、夏のデザインWSをはじめました。
3日間の短期集中型演習で、修士・博士の学生にチューターをお願いし、
スタッフとゲストの研究室先輩が批評を行うといった形にしましたが、
なんと3日間で、9名の研究室卒業生がゲスト講師として参加してくれて、
学生たちに助言、叱咤激励をしてくれました。

夏の合宿 1日目
夏の合宿 2日目
夏の合宿 3日目

みなさんに支えられて、充実したものになりました。(この場を借りて)ありがとう!!

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安土城下町の再生へ向けて

今日は安土のまちづくり有志の皆様、市の皆様とともに、安土城外堀の現状を、田舟に乗って調査しました。
数多く残る古い石垣、カワト、信長もみたはずの昔ながらの風景。
そういった希有な資源を生かして、景観整備とまちづくりをどう進めるか、じっくりと意見交換しました。

外堀の知られざる魅力や景観に磨きをかけ、安土の魅力を再発見してもらう契機とすること。
自分たちで地域の資源を守り育てる風土自治の気運を高め、まちづくりの契機とすること。
こういった大きな方針で意見が一致しました。これから具体的な計画と設計の検討を行っていきます。

 

DSC01132安土の城下町は、周囲の圃場整備地からみても分かるように微高地にあります。

DSC01168集落の縁には石垣が今も残っていて、一部は水辺が広がっています。

DSC01169セミナリオ浜から田舟が出ます。

DSC01183昔ながらの空石積みが川に沿って残されています。

DSC01249田舟の上から外堀を眺めると、非日常に浸れます。

DSC01257草に埋もれていますが、立派な石垣が残っています。

DSC01259安土山や繖山が展望でき、歴史を感じます。

DSC01287安土川にも立派な石垣やカワトが残されていて、昔ながらの風情を感じます。

つれづれと

 

京都造形大の庭園学講座で「文人の住まいと隠遁の風景」を講じるにあたって原稿を書いた。京郊の山のほとりに住んだ近世初期(寛永前後)の文人たちが、いかに風物、風景を見出したか、というのが主題だ。博論の6章をもとにしているが、これを学会で講演発表したとき、東工大の齋藤先生から、なぜ若いあなたがこんなテーマに興味をもったのか、ときかれたことを思い出した。
ふりかえれば、僕が中高校生の頃、五木寛之さんの「生きるヒント」がベストセラーになり、僕も高一のときに読んで、それから仏教思想に関心をもっていろいろ本を読んだことや、10代後半には、当時よく読んでいたヘルマン・ヘッセの「詩人になれないのなら、何にもなりたくない」の言動に共感し、理想主義的考えをもち、何らかのかたちで物書きとして生きたいと思っていたことが背景にある。
いかに生きるか、というテーマは十五歳以来、自身の最も重要なテーマであり、もんもんと悩み考えつづけていたのだが、大学三年前期のトルコ・ワークキャンプで運命が変わり、自分個人の心を満たす=自己満足的生き方では結局は満たされないと気づき、自分の人生の満足のためにも、人に感謝される社会に役立つ仕事をして生きると決めたのであった。このとき内向き思考から180度裏返しになって外向き思考になり、以後、きわめて楽観的性格を得て、今に至っている。

そうしたこともあって、先人の隠者らの生き様に憧れがあって、より知りたかったというのが研究の根本にある。しかし実際、日本の風景史においてもきわめて重要な位置付けにあるのである。17世紀当初に流行した文芸は、600〜1000年以上離れた中国や平安時代の日本の文化・文芸リバイバル運動でもある。漢文の素養が失われてしまったとはいえ、現代もそうなり得る可能性は少なからずあると思う。

多くの先人が書き残しているように、(究極的には)人生はひまつぶしだ、という考えは今も変わらないが、せっかくなので面白いことをしたいとは思っている。社会の中で自己満足に終わらず、面白いことをしようと思ったら、それなりに努力しなければならない。なので、晋代、唐代の詩人のごとく、山中に住んで、社会との関わりを断って隠遁する、というわけにはいかない。まあしかし、文芸世界の理想や高みを目指し、友と交わり、旨いものを食べて酒を飲むことを佳しとする根本の構造は同じである。文芸世界では優れた詩文を書ける=よき友、であるのが、社会に対して貢献できる力を持つ=よき仲間、であるぐらいの違いしかない。最近では、よき仲間と出会い、ともに仕事をし、ともに旨い酒を飲むために、仕事をしているような気もしている。

色彩

色彩検討本日は某橋梁+某高架橋の景観検討会議でした。
あいにくのお天気ではありましたが、なんとか雨はあがってくれました。

事前に綿密に検討を重ね、絞りこんでおいた色見本をつかって、
現場でいろいろな組み合わせを試します。まずは想像していたイメージ通りで安心。
議論しながらひとつに絞り込んでいきました。

重視したのは、見た目の調和ではなく、その地域の地質、植生、集落、人工物などの、
自然環境と歴史環境のなかで、どのような土木構造物として存在することが自然であり、
ふさわしいかということです。
土着性ともいえるかもしれません。

色は本当に奥が深くて難しいですが、納得いく色に決まりました。完成が楽しみです。

文化の有形/無形とアイデンティティ

[付記2016.6.10]
あらためて考えると、僕が歴史研究のテーマを設定するときに基準としている事は、
まちや人(市民、都市デザイナー)のアイデンティティや価値・規範形成に貢献するかどうか、だ。
その貢献が大きいほどよい(むしろ方法論以上に)と考えている。

——付記、以上——

欧米では町の景観そのものが,非常にアイコニックで,歴史をまさに体現するような町が
確かに数多く存在する.景観がコミュニティの,そして地域の強固なアイデンティティと
なっていることが明確だ.

翻って日本では.人々がまちの姿=景観を,どこまでアイデンティティとして
捉えているのだろうか,とあらためて考えてみると,なかなか,こころもとない.
もちろんそうした町もあるが,一般的にアイデンティティの源泉となっているのは
有形の資源ではなく,無形の文化ではないかと思う.

言葉,料理,社会的慣習,産業,祭礼,芸能,地域内活動・・・
そして,地域で語り継がれている物語,ふるさとの記憶・イメージ・・・
(ときにステレオタイプなイメージもあるが)

無形の物語の束のなかに,景観も含めて有形の資源がピースというか,
断片的語り部として存在しているというのが実感に近い.

もちろん,まちの顔が劇的に変わることで,自分たちの町に対する認識が
一変する,ということもあり,有形要素の影響が大きいことも事実だろう.

“計画行為は人々が感じるアイデンティティに強い影響を及ぼす”
“計画行為は開発行為そのものではなく,場所の物理的な変化を左右するガバナンスの基盤と見なすべきである”(パッツィ・ヒーリー『メイキング・ベター・プレイス』)

地域づくりにおいて,地域の人々のアイデンティティのもちかたを探ること
はきわめて重要だ.そこを出発点として地域空間の計画論を立てると
いかなる体系が浮かびあがるだろうか...ということをしばらく考えてみたい.

空知巡検

1

住友赤平炭鉱立坑櫓

2

赤間炭鉱選炭工場跡

3

三菱美唄炭鉱跡(炭鉱メモリアル森林公園)        住友奔別炭鉱跡

4

旧栄小学校(アルテピアッツァ美唄)

 

計画学@札幌から少し足を伸ばし,短い時間でしたが,空知地域を廻りました.
http://www.sorachi.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/yama/index.htm

空知でも炭鉱遺産を活用したいろいろなアートプロジェクトが立ち上げられており(赤平奔別夕張美唄幌内
ドルトムント留学時代にルール地方(エムシャーパーク)でみてきたものと比較しながらみると
なかなか面白く,いろいろと刺激を受けました.

道庁でも地域活性化戦略を策定されており,なかなかよくできていて,参考になります.
元気そらち!産炭地域活性化戦略

 

計画学と景観・デザイン・歴史

土木計画学2016年春大会「土木計画学50周年若手セッション」(2016年5月29日)にて
発表を行いました。今後の議論を呼び起こすためにも、講演録全文書きおこしを掲載します。
まだまだいい足りない事や、議論が必要な点も多いです。
メール等にてコメントいただければ幸いです。

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「景観・計画・歴史研究のフロンティアと実践」    山口敬太(京都大学)

はじめに
欧米では交通と都市デザインが一体的に進められるなど、EngineeringとArchitectureの関係が密である。欧米ではアーバンデザインやランドスケープデザインが職能としてしっかり確立していて、専門職大学・大学院による実践教育が充実している。そこでは徹底的なスタディオ演習が行われ、またプロジェクト型のリサーチがさかんに進められている。フランスでは、景観専門のグランゼコール、エリートのための専門職大学院まである。
日本に景観分野が必要とされたのは、土木分野にArchitectureを根付かせるためだったと考えるが、この種の実践教育は全く十分ではない。現状は、研究室単位の小規模な実践教育を進めながら、学術研究を進める、という、やや中途半端にならざるを得ない状況にある。
下記は私の考える景観・計画・歴史研究分野のフロンティアの見取り図である。

計画学2016景観フロンティア1-4

1.コアとフロンティア
景観分野は、実践から始まっているが、当初から、一つの基礎的学術体系に依っているわけではない。実践また総合のために、さまざまな学問的知見を複合して、体系化してきた 。その求心力の中心は原論、景観論・都市論であろう。分野の研究の柱は、当初は「空間評価・手法」「デザイン技法」「歴史」であった。近年は、主題も広がりを見せていて、ここ10年の国内の主要査読付論文をみてみると、842本/10年あるが、土木204本、都市計画184本、建築211本、造園243本という状況である。(※キーワード検索:「景観」、2006-2015年)広い分野にまたがり、その規模も大体同じ程度である。

2.景観・空間評価について
当初は視覚分析が中心であり、これらは今は景観アセスメント指標として定着した。今も、人間が体験する空間の質を、心理やイメージ、人間の行動の関係から評価することは重要なテーマである。また、近年では地域や場所への愛着などのテーマが掘り下げられている。
一方で、空間の評価の視点というのも変わってきており、いわゆる個人の評価にとどまらず、その空間がどのような人の関わりによって成り立っているのか、という主題が扱われつつある。
地域主体による空間管理や、コモンズとしての景観・場所の成立要因、ローカルガバナンスのメカニズムを、さまざまなアプローチで解明する事が重要なテーマになりつつある。
空間情報の活用も発展性のあるテーマだ。レーザー測量など、道路を中心に、インフラや都市空間の管理のための3次元空間情報のデジタルデータが整備されつつある。ミクロな空間データが都市全体でとれるようになるので、これをどう活用するか、ニーズを掘り起こして手法を開発していく必要がある。

3.歴史研究について
欧米でも日本の建築でも、デザイン教育のなかで、歴史研究は非常に重要視されている 。研究テーマについては、従来の事業史、行政史、技術史的研究から展開して、近年では、空間と社会をめぐる「しくみ」を明らかにするような、いわゆる社会学と歴史学が重なるようなアプローチへと高度化している。
ただしここで、フロンティアとして挙げたいのは、「土木計画史」という研究テーマである。歴史的検証は学問の正当な評価・検証においてきわめて重要だ。京大景観研では、日本最初の都市計画講座になる京大土木の都市計画講座初代教授・武居高四郎(米谷先生の恩師にあたる)に着目して、都市計画における「交通計画」概念の移入がどのようなものであったのかについて研究をはじめている。
交通や土地利用施策と都市形成の関係を検証する。また、国土計画、地方開発の歴史や、計画技術の果たした役割、その政治や合意形成の歴史を探ることは、関係者の方々へのヒアリングも含めて、記録と研究を同時に進めておかなければならない。しかし、当然ながら、歴史学として通用する高度な研究能力が求められる。

4.景観保全について
景観保全は、ここ10年で実務上大きな展開を見せている。特に文化的景観という文化財のカテゴリの創設が、景観の調査研究の専門性を高めている。景観の保全のためには私権を制限する必要があるが、そのために地理、歴史、建築、農学、民俗学などの専門家と、調査・議論を深めながら、景観の価値を、裁判資料をつくるかのごとく論証していく必要がある。そしてその価値に基づいて、景観計画を策定する。そこでは凍結保存的アプローチがとられるのではなくて、あくまで、生きた生活・生業のシステムをどう支えるのか、が計画課題となる。
重要なことは、この専門的な調査と計画のアプローチが一般化し、地域の、何気ない、生活・生業に根ざした地域性を評価する動きにつながっていることだ。景観10年、風景100年、風土1000年という名言があるが、長い時間軸上の、地域の環境と風土の遺産を、暮らしや文化の視点でトータルにとらえて、ボトムアップ的に(ときに観光の力も借りながら)支えるような地域づくり、歴史まちづくりが求められている。ここでも当然ながら、学術調査として通用する強い専門性が求められる。しかし、まだまだこの調査研究が出来る研究者は土木分野では限られている。

5.空間デザインの実践研究について
景観設計技法については、学会発行の景観設計事例集、国の景観形成ガイドラインへと展開し、都市整備のほか、道路、河川、海岸、港湾、砂防などのガイドラインが国から出されて、一定の成果を出した。一方で篠原修先生を中心に、実際の土木施設のデザイン、特に連続立体交差事業を契機とするような、駅周辺の拠点整備とデザイン調整が、市民参加も含めて数多く進められてきた。
空間デザインに関わる専門家と地域の協働は近年進んでいるが、そのなかで都市戦略上、どのようにトータルに都市空間の質を高めるか、というのが重要な課題になっている。たとえば松山ではアーバンデザインセンターがつくられて、まさに先駆的取り組みが進められているが、いわゆる社会基盤整備における空間の質の創出と、デザインのための協議、調整、マネジメント、それらの実践知の理論化、概念化、が重要な課題となっている。
また今後は、現行の都市再生のエリアマネジメントの枠組みが拡張されていき、都心だけでなく地域拠点、郊外や農地などにも展開されていくと思われるが、そこで法人や協議会などの空間形成に関わる地域の主体が、その役割を広げて、ますます重要になっていくと思われる。そのなかでの専門家との協働、特に都市や地域の「戦略」にのっとった空間計画の立案や、そのための合意形成の方法、などの実践知の蓄積がますます必要になるだろう 、 。実践を担う研究者は、実践を理論化するための仮説的フレームを常に持ち、クリアな概念化を目指すことが必要だ。
また、そうした総合的な空間像を描くにあたっては、デザインオリエンテッドの、もしくは価値創出を目的とするための技術が必要だろうと思う 。空間デザイン発想の、交通や防災、観光や環境などとの融合テーマに可能性があると考える。

おわりに
さて、フロンティアのテーマをあらためて眺めてみると、景観というキーワードが少ないことが分かる。既存の景観分野の(特に若手の)研究者は、「景観」という枠から抜け出して、他領域の強い専門性、方法論を身につけて、研究と実践を展開する必要がでているのではないか。テーマはたくさんあるが、何より重要なのは、研究の水準や議論のレベルを上げることだろう。他分野も、であるが、土木計画学のプラットフォームが 、今後、分野横断の実践と研究、協働を広げ、育てる場になればと思う。

(以上)

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